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全国交通安全運動は内閣府の交通対策本部が中心となって推進する交通安全啓発活動期間で、春と秋それぞれ10日間に渡って実施されています。春の交通安全運動は4年に1回全国統一地方選挙が行われる年を除き、毎年4月6日~15日の日程で行われています。
2025年春の期間中の全国の交通事故件数は7,206件、交通事故死者数は64人でした。
春の交通安全期間中の交通事故件数は昨年まで3年連続で減少していましたが、、4年ぶりに増加に転じてしまいました。また交通事故死者数も昨年4年ぶりに減少しましたが、今年は再び増加に転じてしまいました。
昨年(2024年)は、交通事故件数、交通事故死者数とも大幅に減少しましたが、今年は交通事故件数が83件増(+1.2%)、交通事故死者数が9人増(+16.4%)と特に交通事故死者数が大幅に増加してしまいました。
全国交通安全運動は交通安全の啓発を目的として、1948年から行われています。春と秋の2回行われるようになったのは1952年で、毎回全国交通安全運動推進要綱によって運動重点が決められています。
2025年の春の運動重点は、以下の3項目でした。
(1)こどもを始めとする歩行者が安全に通行できる道路交通環境の確保と正しい横断方法の実践
(2)歩行者優先意識の徹底とながら運転等の根絶やシートベルト・チャイルドシートの適切な使用の促進
(3)自転車・特定小型原動機付自転車利用時のヘルメット着用と交通ルールの遵守の徹底
昨年との違いは、(1)については、こどもに限らないという意味で「こどもを始めとする歩行者」としたことと、「安全な横断方法」を「正しい横断方法」としたことです。また(2)については、近年の重大な交通事故に関して重点的に取り組まなければならない要因の一つとなっている「ながら運転」の根絶を挙げ、シートベルト・チャイルドシートの適切な使用を促進することを挙げた点です。また(3)に関しては、昨年「電動キックボード等」としていたものを2023年7月改正の道路交通法の新設車両区分に合わせて「特定小型原動機付自転車」としたことです。
春の全国交通安全運動期間中の交通事故件数を都道府県別にみてみると、4年連続で東京都がワースト1位で、2024年にワースト2位になった愛知県が引き続きワースト2位でした。ワースト5位までの順位は前年と変わらず、さらにワースト1位だった東京都以外は交通事故件数が増加を示す結果となりました。特に50件程度も増加した愛知県と神奈川県に関しては、今年のさらなる交通安全に関しての努力が求められるという結果となりました。
全国交通安全運動は年間で春と秋に10日ずつ実施されていますが、実際に交通事故削減に効果があったのかどうか、昨年の検証では「わずかな数値の差ですが効果があったといえそうですが、誤差の範囲だといえなくもありません」という結果でした。では、今年はどうだったのか?同様に検証してみたいと思います。
2022年から2024年の交通事故件数と交通事故死者数を全国交通安全運動期間とそれ以外の期間で比較してみると、交通事故件数は交通安全運動期間中平均が1日あたり786件、それ以外が1日あたり824件、交通事故死者数は全国交通安全運動期間中平均が1日あたり6.6人、それ以外が1日あたり7.0人という結果でした。
昨年と同じく今年も2025年1年間の交通事故件数を春の全国交通安全運動期間中の数値をもとに予想してみます。交通事故の発生件数を予想することはある意味不謹慎なことでもありますが、1件でも交通事故が減ることを願っての交通事故の数値予想です。
春の全国交通安全運動と年間の数値の相関を考えて適用すると、2025年は交通事故件数が273,206件で前年比6.1%減という予想になります。
全国交通安全運動期間が春と秋に決められていることには理由があります。春は、新年度が始まり新たに通学・通園する児童などが増えるため、幼児や児童の交通事故が増加傾向にあるということ。秋は、夜が長くなり日没が早くなるために、薄暮や暗い時間帯に慣れていない運転者が事故を起こしやすくなる傾向があるということです。
さらに2025年の交通安全運動の重点には「ながら運転の根絶」が採用されました。
全国交通安全運動実施期間中だけでなく、普段からスマホ画面を開いたり、通話したり、「ながら運転」を行なうことがないように徹底することが大切です。交通事故をなくすために、交通規則を守り、運転者も同乗者も歩行者も危険を感じることなく、安心して生活できる社会実現のためにも、安全運転から一歩進んだ「安心運転」が求められているのです。
本文中のデータの出典:
警察庁 令和7年春の全国交通安全運動期間中の交通事故発生状況
警察庁 令和6年春の全国交通安全運動期間中の交通事故発生状況
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