2024年9月21日、高知県の高知東部自動車道下り線で片側1車線の高速道路を走っていた車に対向車がセンターラインをはみ出して正面衝突するという交通事故がありました。
片側1車線の高速道路は、対向車が車線をはみ出してきた場合に逃げられないという危険は前回お伝えしたばかりですが、この交通事故には驚くべき事実がありました。
起訴状などによりますと、被告は事故当時、運転支援機能を使った状態でシートベルトを外し、サンダルに履き替えようとしていたという事実です。
加害車両は、自動運転機能搭載の最新型でした。被害車両のドライブレコーダーには正面衝突してきた車両の運転者の顔が一部しか映っていなかったとのことです。普通に運転していれば顔は確実に映っているはずです。
加害車両の動きは、急に右に90°くらいハンドルを切ったとしか思えない角度だったようです。高速道路を普通に運転していて、右に90°ハンドルを急に切るという行為は、通常の運転からは考えにくい行為です。
さらに加害者は「日常的に自動運転モードにして着替えをしていた」という趣旨の供述をしているそうです。
自動運転は現在開発中の技術で、レベル1からレベル5までの段階があります。そのレベル内容を記したものが次の表です。
これによるとレベル1は運転支援で、自動ブレーキ、前の車について走る機能(ACC)、車線からはみ出さない機能(LKAS)が搭載され、システムが前後左右のいずれかの車両制御を行なうというものです。
レベル2は特定条件下の自動運転機能で、レベル1の機能を組み合わせて、アクセル・ブレーキとハンドル操作の両方を支援するものです。ただ、気をつけなくてはいけないのは、自動運転と言っていますが、あくまで運転者はハンドルを握っている必要があり、運転の責任は全て運転者にあるということです。
高知の交通事故の加害車両はこのレベル2の自動運転機能を搭載していました。今現在の日本では一部の例外を除いて、このレベル2までしか実用されていません。
2025年4月から6月まで放映されたテレビドラマ「イグナイト-法の無法者-」の中で、制御できなくなった路線バスが暴走し、交通事故を起こすというシーンが描かれていました。
事故原因はバスの運転手が副作用の強い薬を使用していて、運転操作を誤ったということで処理されていたことに対し、このバスが自動運転実験に使われていて、交通事故の原因はこの自動運転の設定ミスだったのではないかと疑問を持った弁護士が真実を暴くという物語です。
自動運転開発とその実証実験に関する現状や課題を考えるには、絶好の教材となるドラマでした。
現実には、今年4月、自動運転バスがコンクリート擁壁へ衝突するという事故がありました。パーキングブレーキが作動しなかったことによるもので、原因は車両を有線で制御するコントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)の通信速度の設定ミスでした。
この自動運転バスは区間によってはレベル4で運転していましたが、事故直前からレベル2に切り替えたところだったとのことです。そのため、この交通事故は自動運転中の事故ではなく、自動運転中に生じたエラーのリセット処理が原因で起こった事故のようです。
人が介在することによって、予測不可能な原因による交通事故は起こりうる可能性があるということを示したことには違いありません。
画像はイメージです
2023年11月、アメリカのアリゾナ州の高速道路で、衝突事故があったために車を降りて交通整理をしようとした女性を、通りかかった「フルセルフドライビング(完全自動運転)」の車が、高速度を保ったまま撥ねたという死亡事故がありました。
この事故で運転者は責任を問われなかったということです。
同様の自動運転による交通事故が他でも起こっているようです。
このようなシステム不備が及ぼす事故は今後も起こりえることが懸念されます。
※画像はイメージです
自動運転は開発途上にある技術です。
レベル3、4、5の自動運転が実現されたとはいえ、エラーによる交通事故は実際に起こっています。
運転者の責任ではないと法律で規定されていれば、交通事故が起こっても仕方ないという訳ではありません。
まして、まだ運転支援のレベルを抜け出していないレベル1、2の段階では、その技術に任せ切りにはできません。
完全な自動運転までには時間がかかりそうです。
「安心運転」には、まだまだドライバーひとりひとりの意識と行動が必要です。
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