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コラム

安心運転
交通死亡事故
~失われた命への償いとは~
公開:2025年10月31日
故意に赤信号を無視して死亡事故を起こした加害者に償いの気持ちはあるのか

 2025年1月、福島県郡山市で発生した交通死亡事故。被害者は大阪から大学受験のために訪れていた女性でした。加害者は赤信号を無視し、時速約70kmで、さらに飲酒運転で交差点に突入した男性ドライバーです。

 裁判では、この加害者の運転が危険運転に該当するかどうかが争点となり、2025年9月17日の判決で危険運転と認定され、懲役12年の判決が言い渡されました。争点はただ一つ、加害者が赤信号を故意に無視したかどうかでした。飲酒運転やスピード違反については、危険運転と認定するのは難しいとの結論が出ていたためです。


 加害者の主張は、「眠気で目をこすり、暖房を弱めるためにエアコンの操作をしていたため赤信号を見ていなかった」「赤信号は故意に無視したのではなく見落とした」というもので、あくまで過失で交差点に進入したとしています。しかし、加害者は「ビール中ジョッキ4、5杯飲んだのは覚えている。4杯目に口をつけてふわふわし始めたが、その後も飲み続けた」と述べています。事故当日、代行を利用して帰宅後すぐに買い物のために飲酒運転を開始し、その際にタクシーと衝突しそうになってブレーキを踏んで回避した後、3つの赤信号を連続で無視していたことが判明しています。

3つの信号を連続無視しておきながら、事故を起こした交差点での赤信号無視は別の過失だと主張することは考えにくいでしょう。


 赤信号を認識していたかどうかは問題ではなく、「信号の色を気にせず、赤信号であろうと交差点に進入するつもりで停車しなかった行為」は、赤信号を故意に無視したことと同じと判断され、今回もそのように認定されました。


加害者の言い逃れと償いの気持ち

 加害者は多重の交通違反を犯し、人を死亡させたにもかかわらず、「信号を無視していない」「眠気による見落とし」と主張を変えませんでした。

検察は懲役18年を求刑しましたが、前科がないことを理由に判決は12年に減刑されました。


 これに対し被害者遺族は「刑があまりにも軽い」と述べており、加害者に償いの気持ちが示されていないことがうかがえます。


 交通事故の加害者と被害者の関係は様々ですが、加害者の償いの気持ちの有無や大きさも、交通死亡事故の重要な問題です。

特にスピード違反、煽り運転、飲酒運転、無免許運転、集団暴走運転など、危険運転を常習的に行う運転者に多い傾向があると考えられます。


償いのメッセージ展

 2025年8月20日から29日まで、福岡県庁で「償いのメッセージ展」が開催されました。


 これは2006年に福岡市の海の中道大橋で起きた、子供3人の命が奪われた飲酒運転事故から19年を迎え、飲酒運転で事故を起こしたり検挙された運転者のメッセージを通じて飲酒運転撲滅を訴えるものです。展示には「誰にも迷惑をかけていないと思い込んでいた心の中の驕りがあった」「取り返しのつかないことをしてしまい、呆然とした」などのメッセージが寄せられています。


 2006年の海の中道大橋事故の被害者遺族による講演会が2025年7月11日に開催され、飲酒運転事故の被害者遺族の思いが語られました。


 償いとは、被害者遺族の気持ちに完全に寄り添うことができなければ成り立たないのではないかと感じられます。加害者がその気持ちに寄り添うことは非常に困難であり、だからこそ交通事故や交通違反は決して起こしてはならないのです。

軽々しく「償う」などと言えるものではありません。


出典:FBS News NNN 「宝物を失った日」海の中道の事故から19年

      


 千葉県警察のホームページには「交通受刑者の手記」というページがあり、ひき逃げをした加害者2人のメッセージが掲載されています。ぜひご覧ください。


出典:千葉県警察 交通受刑者の手記

   


 交通事故を起こす前は交通ルールを軽視していたこと、救護活動をせず逃げた理由の稚拙さ、被害者に対して償いの気持ちが薄いことなどが綴られています。しかし、少しずつ償いの気持ちが芽生えている様子も見受けられます。


 二度と交通事故を起こさないために、ぜひさだまさしさんの「償い」という曲を聴いてほしいものです。


参考:OGAS 交通事故の「償い」~重大な交通事故を引き起こす法令違反とは何か~

       


 警視庁のホームページには「つぐないの碑」と題した手記「贖(あがな)いの日々」が掲載されています。

ここに掲載されている加害者は、千葉県警察の加害者2人と比べてもしっかり罪と向き合い、償いを考えていることが感じられます。同じ反省文でも償いの意識の違いがよくわかります。

また、その意識の違いが交通ルール違反のハードルの低さに関係しているのではないかとも思われます。


出典:警視庁 つぐないの碑 手記「贖(あがな)いの日々」



交通違反を絶対にしないという強い意志を持って安心運転を!

 交通事故の加害者が被害者や遺族にどう償うかは難しい課題です。

加害者自身が事故の原因を自分の責任と認めていなければ、償いの気持ちは決して伝わりません。

慰謝料やお見舞金をいくら支払っても、償いの気持ちは伝わりません。裁判で争う姿勢を見せれば、さらに溝が深まるでしょう。


 そんな時、さだまさしさんの「償い」の歌がどれほど心に響くかを考えさせられます。

 2002年の東京地方裁判所の判決で、山室裁判長は被告人に対し「さだまさしの『償い』という歌を聞いたことがあるか」と問いかけ、「歌詞だけでも読めば、なぜ君たちの反省の言葉が人の心を打たないか分かる」と説諭しました。翌日、加害者の一人の叔母から歌詞を書き写した手紙が届き、控訴せず実刑判決が確定したというエピソードがあります。

 この歌詞からは、交通事故を起こさない覚悟の大切さが伝わってきます。


 交通事故を起こさないための安全運転を超え、周囲に安心感を与える「安心運転」を心がけ、交通事故のない社会、償いを考えなくてよい社会を目指しましょう。


監修

大阪ガスオートサービス
大阪ガスオートサービス株式会社
SAFE推進部 安心運転訓練センター
企業ドライバーに特化した安全運転教育を提供し続け、約30年。
受講企業数400社以上、受講者数は13万人を超える(2025年3月末時点)。
交通心理士/心理士補、指定自動車教習所検定員/指導員、自動車整備士/検査員、交通機動隊白バイ隊員など、豊富な知識と経験を持つ講師陣が、多角的な視点、専門的知見により、安全・安心運転ドライバーへと導く。
公式YouTubeチャンネル

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