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高齢運転者特有の交通事故への対策
公開:2024年5月1日
高齢運転者に対する道路交通法の改正

 高齢運転者による交通事故のニュースが最近よく取り上げられます。交通事故は運転する高齢者だけでなく一般の運転者や歩行者を巻き込むことにもなります。

 そのことを踏まえて、2022年5月から道路交通法が改正され、75歳以上の高齢運転者の免許更新時運転技能検査が義務化されました。75歳以上で過去3年間に一定の交通違反歴がある者に対し、運転技能検査に合格しなければ運転免許の更新ができなくなるというものです。また認知機能検査を導入した2009年には検査結果に応じて高齢者講習を行なうことになっていましたが、検査結果にかかわらず実車指導を含む2時間の高齢者講習受講が義務になりました。


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高齢運転者の交通事故は他人事ではない

 高齢運転者が高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えたりしたことによる交通事故が後を絶ちません。これらの事故は特に高齢者に多い事故と認識されていますが、自分は高齢者ではないので高齢運転者のことは関係ないと思っていたら大きな間違いです。



第1当事者が四輪車の年齢層別のペダル踏み間違い事故割合(特殊車、ミニカーを除く)

(出典:ITARDAインフォメーション124)




年齢層別発生割合の比較

(出典:ITARDAインフォメーション036)



 誰でもこのような交通事故の犠牲者になってしまう可能性はゼロではありません。高速道路を逆走した車が自分が高速道路を運転しているときにやってきたら、自分が駐車場に車を止めようとしたときにアクセルとブレーキの踏み間違えた車が急スピードで迫ってきたら、そうなる前に事前にその可能性を認識して、いざというときにどうしたらいいかを考えておくことは大切なことです。




高速道路の逆走について

 高速道路の逆走事故発生は特に高齢者に限って起こっているものではありませんが、高齢者に多いのが昼間の逆走事故です。高齢者以外では早朝や夜間の場合が多いことを考えると明らかに違いがあります。

 また高速道路逆走原因をみても、高齢者では疾患など何らかの原因による「認知機能低下」によるものが多く、次いで「高層道路の利用方法がわからなかった」という原因が続きます。高齢者以外の「うっかり、ぼんやり、考えごと」「居眠り、寝ぼけ」などとは違った理由によって起こっていることがわかります。



(出典:イタルダインフォメーション2002)


 高速道路の逆走が発生する場所は、インターチェンジ・ジャンクション、サービスエリア・パーキングエリアの順に多く、本線がそれに続きます。もし高速道路の利用方法がわからなかったとしたら、インターチェンジやジャンクションで間違った方向へ進んでしまった場合に戻ろうとして逆の方向へ向ってしまうことは考えられることです。出口や分岐点を行き過ぎてUターンして戻ろうとすることもありえないことではありません。


 2022年から運転技能検査が義務になったのは、こういった「わからなかった」という交通事故原因に対応して交通事故を減らす目的も含まれています。


高速道路逆走の車に巻き込まれないために

 高速道路を逆走してくる車は、追い越し車線を走ってくることがほとんどです。それは逆走と気づかず、左側と思って走っているからです。逆走の車に巻き込まれないための対策として、高速道路ではなるべく追い越し車線を走る時間を短くし走行車線を走るようにします。前から逆走車が走って来てもやり過ごすことができる可能性が高まるからです。

 さらに逆走事故対策として、なるべく車間距離を広くとって運転することも大切です。前から逆走車が走ってくるのをなるべく遠くから確認できるからです。

 もし逆走車を遠くから見つけた場合は、安全を確認して路肩などの避難できる場所を探します。停車後は安全のため後続の車にハザードランプを点灯して知らせます。



 逆走車を見かけたときに同乗者がいる場合は速やかに110番通報します。もしいない場合は料金所やサービスエリアなどで安全を確保してから110番通報するか、非常電話で道路管制センター(#9910)へ通報します。情報はすぐに高速道路情報板やハイウェイラジオで流される仕組みになっています。

もし自分自身が高速道路逆走をしてしまった場合には

 もし自分自身が高速道路逆走をしてしまったと気づいた場合には、速やかに減速して安全な場所に停車します。そのうえで前方から来る車に対してハザードランプで知らせ、自分自身は安全を確かめたうえで車から降りてガードレールの外などの安全な場所へ避難します。

 その後必ず、逆走したことを隠さず110番または非常電話で逆走の連絡をします。


アクセルとブレーキのペダル踏み間違いについて

 車の「アクセルとブレーキのペダル踏み間違い」は特に高齢者に多い交通事故原因です。最も多い事故原因は「慌て、パニック」ですが、それ以外に認知機能の低下や視覚機能の低下、注意力・集中力の低下、情報処理の遅れ、身体機能の低下などの高齢化が原因となっている事故も多数あります。



(出典:イタルダインフォメーション2018)


 事故の発生場所は単路と駐車場等が多く、発生形態は直進時と発進時に集中しています。直進していて速度を落とそうとしていたにもかかわらずアクセルを踏んで速度を上げてしまった場合や、停車した車を発進させるときにゆっくり運転しているつもりでアクセルを踏んで急発進してしまう場合などがあります。


アクセルとブレーキの踏み間違いの車に巻き込まれないために

 アクセルとブレーキを踏み間違う車に巻き込まれないための対策として 普段から他の車と十分な車間距離をとるようにすることが大切です。それでも後方や側方から急加速・急発進で来た車の場合は避けられないこともあります。この場合の対策としては、後方や側方から来る車にブレーキを踏ませるような状況をつくらないように、自分自身が急ブレーキや急停止をしないように、車間距離をとって周囲を確認しながらスピードを抑えて安全運転をすることが大切です。

 また駐車場では停車または発車しようとしている車にも注意が必要です。車から降りて歩いている場合も、停車または発車しようとしている車にはなるべく近づかないように、その進行方向を歩かないことが大切です。



高齢者の交通事故を減らすために安全運転から安心運転へ

 交通事故は自分自身の運転にさえ気を付けていれば完全に防げるというわけではありません。他の運転者や歩行者にも気を配り、事故に巻き込まれないようにすることも大切です。高齢運転者特有の事故に関しても、事故に巻き込まれないようにと考えるだけではなく、高齢運転者が事故を起こさないように周囲が配慮して安全運転を心掛けることが大切です。それが自分自身だけでなく、周りの運転者や歩行者を巻き込んだ「安心運転」につながります。

 全ての運転者が、事故の可能性を知り、予め事故に合わないような気配りをして運転をする「安心運転」が、今求められています。


監修

大阪ガスオートサービス
大阪ガスオートサービス株式会社
SAFE推進部 安心運転訓練センター
企業ドライバーに特化した安全運転教育を提供し続け、20年。
受講企業数340社以上、受講者数は12万人を超える(2023年3月末時点)。
交通心理士/心理士補、指定自動車教習所検定員/指導員、交通機動隊白バイ隊員など、豊富な知識と経験を持つ講師陣が、多角的な視点、専門的知見により、安全・安心運転ドライバーへと導く。
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