コラム

こんなとき
雨の日の運転は7倍危険
~雨中で時速60km以上の走行は機能不全を引き起こしかねない~
公開:2024年7月2日
梅雨の季節の交通事情

 梅雨の季節になりました。湿度が高くじめじめした季節は気分もすっきりせず、運転するのもどことなく気分がどんよりしがちですが、最も運転で気をつけないといけないのはやはり雨です。

 雨が降ると、水滴がフロントガラスにつき、ワイパーを回しても視界は普段より狭くなります。さらに昼間でも晴れた日より暗く、よく注意しないと対向車や歩行者、交通標識などのいろいろなサインを見落としがちです。

 さらに湿度が高いことで車内のガラスも曇りがちになります。ドアミラーも水滴の影響で確認しづらいこともあります。

 大雨になれば、道路が冠水して走りづらいだけではなく、路面の表示も隠れてしまうこともあります。さらに歩行者は傘をさしていて、周囲のことにあまり気づきにくい状態になります。

 これだけでも雨の日の運転はかなり慎重にならないと、交通事故の原因と隣り合わせだということがわかるでしょう。




雨の日の事故の特徴

 雨の日が交通事故原因と隣り合わせであることは、注意して運転することである程度対処できますが、注意しても対処できないことがあります。それは車のタイヤがスリップしやすくなるということです。これは、雨の日には注意して普段通りの運転を心掛けるだけでは駄目だということを示しています。

 首都高速道路の事例ですが、雨の日の1時間当たりの死傷事故件数は晴天時の約4倍、施設接触事故は約7倍になるという統計データがあります。

 雨の日は路面が滑りやすくなるというのがこの4倍または7倍の事故件数の多さの大きな原因とされています。

 さらに雨で路面が滑りやすくなることでブレーキの制動距離が延びるので、いざというときに停止できる距離を確保するため車間距離をいつもより多く取る必要があります。その他、道路状況を確実に把握するためにワイパーを早めに作動させて異常を検知しやすくすること、滑ることを見越してカーブや車線変更時には急ハンドルにならないように気を付けることも大切です。









雨の日の車のスピードと交通事故の関係

 雨の日の高速道路の事故がそれ以外より多いことは、高速道路を走る車のスピードも影響しています。一般に時速60kmを超えると接触事故が増えると考えられています。


(出典:首都高ドライバーズサイト)


 高速道路では60km以上で走行する場合が多いので、雨の日は特に注意が必要ということです。また、雨の影響は高速道路に限ったことではありません。高速道路以外でも60kmを超える速度の場合は特に注意が必要になります。


 普段から運転速度に気を付けることはもちろんですが、雨の日は普段よりスピードを控えめにして時速60km以上にならないように気を付けることが大切です。



接触事故が増える原因「ハイドロプレーニング現象」とは?

 雨天時に水に濡れた路面で車線変更する場合、カーブを曲がる場合、ブレーキ操作を行なう場合などで、ハンドルをとられることがあります。またブレーキが思ったより効かないと感じることもあります。その原因がハイドロプレーニング現象です。

 ハイドロプレーニング現象は、車のタイヤと路面の間に水が入り込み、タイヤの摩擦力が発揮できなくなる現象です。このハイドロプレーニング現象を防ぐために、タイヤには溝(トレッド溝)が掘られ、タイヤと路面の間の水を吸い込み、排水することでタイヤと路面の摩擦を確保してハイドロプレーニング現象を起きにくくしています。

 そのため、タイヤの溝がすり減っている車は、この機能が弱まるためにハイドロプレーニング現象が起きやすくなるため危険です。またタイヤの空気圧が低い場合もタイヤが路面に押し付けられて溝の効果が弱まるため、ハイドロプレーニング現象が起きやすくなります。

 このハイドロプレーニング現象が起きやすくなる速度を雨の道路で車を旋回させて調べた実験があります。この実験結果では、溝のある車の場合、車の速度が時速60kmを超えるとハイドロプレーニング現象が起こりやすい状況になることが確かめられています。これが、高速道路で60km以上の速度になると施設接触事故が増加することにつながっています。

 また溝のないタイヤでは時速20km以上ですでに危険な状態になり、時速75kmでは完全にカーブを曲がれない程度の状態になってしまうことが確認されています。溝のある車では時速100kmを超えると同様の状態になりますが、この差を考えても、溝のないタイヤ、溝が摩耗したタイヤを履き続けることの危険性がわかります。



トレッド溝の効果(出典:日本自動車研究所)



ブレーキテストでも時速60kmから危険

 JAFが行ったブレーキテストの結果では、雨の日とそれ以外の日のブレーキの制御距離がどれくらい違うかが検証されています。

 時速60kmでは通常のタイヤでは雨の日とそれ以外で大きく違いはないものの、摩耗したタイヤ(2分山)のものでは、制御距離が雨の日以外の15.8mに対し、雨の日は18.0mと2m以上延びることが確認されました。これが時速100kmになると溝が十分あるタイヤ(10分山)では大きな違いはないのに対し、摩耗したタイヤ(2分山)では雨の日以外では42.6mであった制御距離が雨の日には70.5mになり、約28mも延びることがわかりました。雨の日の高速度の運転がどれだけ危険かがわかります。




他にもある雨の日特有の現象「蒸発現象」

 雨の日の暗い道で、対向車がライトをつけている前を歩行者が横切ろうとしたときに一瞬歩行者が消えたようになることがあります。これを「蒸発現象」といいます。自分の車のライトと対向車のライトの間を歩行者が横断することは普通にある現象です。その横断する歩行者が消えるようになるということは、非常に危険な状況です。


日頃から車の点検を欠かさず、安心運転を!

 雨の日は気を付けていても交通事故の危険が増し、危険な状態になることがわかりました。じめじめした梅雨の季節の運転は気分的にも低調になりがちです。こんなときには車の手入れも怠りがちになりかねませんが、普段から意識して、雨の日に備えておくことは、交通事故防止のためにも非常に大切なことです。

 雨の日対策として、車のフロントガラスの撥水処理をしておくと、もし仮にワイパーが故障したとしても対処できます。窓ガラスやドアミラーが曇ったり、雨粒で見づらくならないように曇り止めなどで手入れすることも必要です。雨の日は薄暗いことが多く、昼間でもヘッドライトを点灯して運転することが必要になりますので、ヘッドライトの点検も大切です。

 また、走る前に湿気で車内が曇ってしまわないようにエアコンを効かせて視界がクリアになってから運転を始める時間のゆとりも必要です。

 日頃からの車の手入れと雨の日のための準備をして、さらに雨の日の危険性を熟知して交通事故を起こさない安心運転ができるようにしておくことが求められています。





監修

大阪ガスオートサービス
大阪ガスオートサービス株式会社
SAFE推進部 安心運転訓練センター
企業ドライバーに特化した安全運転教育を提供し続け、20年。
受講企業数340社以上、受講者数は12万人を超える(2023年3月末時点)。
交通心理士/心理士補、指定自動車教習所検定員/指導員、交通機動隊白バイ隊員など、豊富な経験を持つ講師陣が、多角的な視点、専門的知見により、安全・安心運転ドライバーへと導く。
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