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生活道路の法定速度が時速30kmに制限される道路交通法施行令改正が7月23日に閣議決定され、2026年9月1日から実施されることになりました。制限されるのは、一般道路のうち、標識で最高速度が制限されている区間を除き、中央線や中央分離帯などがない道路です。
今までは標識等がなくて速度制限が定められていない道路の法定速度は時速60kmでした。小学校の登下校時などに細い通学路をかなりのスピードを出して通り抜ける車は非常に危険なのですが、それが時速60km以下ならば交通違反ではなかったのです。この法改正により、今後は最高速度違反として取締りの対象となります。
今までも生活道路の最高時速を時速30kmに制限する試みは行われていました。それが2011年9月から始まったゾーン30です。ゾーン(指定区域)を定めて時速30kmの速度規制を実施し、さらに、様々な安全対策を組み合わせて行うことで、ゾーン内における交通安全対策を行なうものでした。
2015年度末までに全国で整備したゾーン30の2,490ヵ所において、整備前年度の1年間と整備翌年度の1年間を比較した資料によると、交通事故件数は23.5%減少したという効果が検証されています。そのうち対歩行者と対自転車交通事故件数は18.6%の減少となりました。
さらに交通死亡・重傷事故に限って整備前と整備後を比較したデータでは、死亡・重傷事故件数は26.8%減、そのうち死亡事故件数は38.9%減という結果でした。
この期間中(2010年~2016年)の交通事故件数の平均減少率は10.4%、対歩行者・対自転車交通事故件数は11.6%減、死亡・重傷事故件数は9.1%減、死亡事故件数は7.1%減ということを考慮しても、それぞれの減少率は平均を上回り、特に死亡・重傷事故に関して効果が高いことが実証されました。
出典:生活道路交通安全フォーラム「ゾーン30」による生活道路対策について 警察庁交通局資料
この時速30kmという数字には根拠があります。それは時速30kmを超えると衝突時の歩行者が致命傷となる確率が格段に上がるからです。
例えば、時速30km未満の場合は致死率10%以下なのですが、時速40kmになると致死率40%以上、時速50kmになると80%以上、時速60kmではほぼ100%にもなるのです。
ゾーン30の効果検証によって、生活道路の交通事故は減少し、特に歩行者の死亡・重傷事故が大きく減少することがわかりましたが、このゾーン30における規制速度を生活道路全体に広げることで同じような効果は期待できるのでしょうか?
まず、今まで法定速度が時速60km規制であった道路が、いきなり法定速度時速30km規制に変わって、そのことがどの程度認知されるのかが問題です。最高速度制限の標識が今までなかった一般道路のため、標識などを新たに設置することなく、最高速度規制が時速60kmから時速30kmに変わるのです。
この最高速度規制の標識がない道路は一般道路の約8割にものぼり、そのうち中央線や中央分離帯のない生活道路が該当することになります。ゾーン30ではゾーン30区間を示す表示がありました。それでもゾーン30整備後の最高時速が平均で時速32kmという結果で時速30kmを超えているのです。
生活道路はそこで暮らす住民にとってなくてはならない道路です。そこで暮らす人たちに安心して道路を使うことができるように対策することは大切なことです。
交通事故件数は2023年は増加に転じたのですが、全体的には毎年減る傾向にあります。しかし幅5.5m未満の道路における交通事故は横ばい傾向で、全体の減少率と比べて減っていないようです。
また幅5.5m未満の道路における交通事故発生時間帯は、朝6~9時の通勤・通学時間帯と夕方16~19時の下校・帰宅時間帯に集中しています。
生活道路を走るときは時速30kmの意味を認識し、周囲に配慮して運転をしたいものです。
特に通勤・通学時間帯は、歩行者も運転者も時間がなくて周囲への注意を怠りがちです。そんな場合でも運転者自身だけでなく、生活者も安心して道路を使うことができる安心運転が必要とされているのです。
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