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意図しているいないにかかわらず、気が付いたら最高速度違反(スピード違反)をしていたという経験はドライバーの多くにあることでしょう。
スピードを出し過ぎて走る原因は人それぞれですが・・
「流れに乗っていた」「制限速度を守っていたらかえって交通の妨げになる」「追い抜きのために仕方なくスピードを上げた」
というような、原因は自分以外にあるというもの。
「仕事で急いでいた」「ゆっくり走っていたら間に合わない」
といった、スピードを出すことが必要だったというもの。
「なぜ自分だけ?前の人も捕まえるべき」「たった10km/hオーバーで?」「速度を測定する機械が間違っているのではないか」
というように、自分は悪くないというもの。
「自分は地域に貢献しているのに」「警察署長が知り合いだから」
と、ここまでくるともはや交通違反と全く関係ないもの。
「隠れて取り締まるのはどうか」とか「取り締まっていると知っていたらスピード出さなかった」
というような、見つからなければ交通違反してもいいと自ら白状しているようなケースもあるようです。
これらは、見方によっては「反省をしていないという主張」にも聞こえてしまいます。
では、交通違反をすると、何が問題なのでしょうか。それは、交通違反をする人の方が交通違反をしない人よりも交通事故を起こす確率が高いということです。
2008年の統計データですが、過去3年以内の交通違反回数とその後3年間に交通事故を起こした割合の相関関係を調べてみると、交通違反歴のある人の方が交通違反歴のない人よりも明らかに交通事故を起こす確率が高く、違反歴1回では1.6倍、違反回数5回以上だとなんと3.8倍の確率にもなることがわかります。3年間に5回以上交通違反をした人がその後3年間に交通事故を起こす割合は7.9%にもなり、すなわち12.6人に1人が確実に交通事故を起こしているということです。交通違反者全体で言えば、違反歴のある人全体3,7841人のうち交通事故を起こしたのは各違反回数別の人数を合計すると1,527人となり、平均4.0%となります。違反歴のない人89,514人のうち交通事故を起こした人は2.1%であったことに比べると、1回でも交通違反をしたことがある人は、約2倍の確率で交通事故を起こすということになります。
過去3年以内の交通違反回数とその後3年間に事故を起こした割合
出典:ITARDA 2008No.23 事故と違反を繰り返すドライバー
このデータ自体の傾向が現在でも同じ傾向だということは、最近のデータでも実証されています。神奈川県警の2023年のデータでは、交通違反ありの人が交通違反なしの人の約2倍の確率で交通死亡事故を起こしていることが確認されています。過去3年ではなく、過去5年まで遡ると、2014年のデータですが、大阪府での過去5年まで遡った交通死亡事故と交通違反の関係では、同じく2.8倍に跳ね上がる結果となっています。
交通死亡事故原因者の違反歴の有無(神奈川県)
交通死亡事故原因者の違反歴の有無(大阪府)
出典:NEXCO西日本資料 交通死亡事故当事者と 交通違反歴との相関分析結果
交通違反をする人は交通違反をしない人より2倍以上交通事故を起こす可能性が高いことはわかりましたが、さらに交通事故を起こした人は何度も交通事故を起こす可能性があることもわかっています。過去3年間に事故を2回以上起こした人は、事故を起こしていない人の6.4倍も事故を起こす可能性が高いということです。事故1回の場合はたまたまの場合も考えられますが、それでも事故を起こしていない人の2.6倍の確率なのです。
過去3年間の事故回数別のその後3年間に事故を起こす確率
出典:ITARDA 2008No.23 事故と違反を繰り返すドライバー
また交通違反をする人は何度も交通違反を繰り返すこともわかっています。過去3年で5回以上交通違反をした人はその後3年で1回以上の違反をする確率は84.3%にもなります。過去3年に違反のない人と比べて約4倍の違反率です。さらに5回以上の違反に限ってみると、過去3年に5回以上の違反がある人は過去3年に違反がない人と比べて70倍もの確率になるのです。違反の多い人は高確率で多くの違反を繰り返すことがわかります。
過去3年の違反回数別その後3年の違反率
出典:ITARDA 2008No.23 事故と違反を繰り返すドライバー
交通違反をする人の方が交通違反をしない人より交通事故を起こす可能性が高いことがわかりました。さらに交通事故を起こした人は交通事故を起こしていない人よりも再び交通事故を起こす可能性が高いこともわかりました。
そのうえ、交通違反の回数が多いほど交通事故を起こす可能性が高く、交通違反を繰り返す人ほどさらに交通違反を繰り返し続けることもわかりました。1回でも交通事故を起こした人は、自らを律して二度と交通違反をしないと誓わなければ、この交通違反と交通事故の確率の無限ループにはまり込むことになるのです。
さらに、これはすなわち交通事故を起こしやすい人が交通違反を取り締まることであぶりだされることを意味しています。交通違反を取り締まらなければ、こういう交通事故をより起こしやすい人が意識されないまま交通事故を起こし続けるということにつながる可能性があります。
そのためにも交通違反取締りは重要です。その際に交通事故を起こす可能性の高い人をあぶりだして講習等を通じて交通教育ができる機会を作ることができるからです。
以前のコラム「交通事故の「償い」~重大な交通事故を引き起こす法令違反とは何か~」で、「安全不確認を基準にして、どのくらい危険な法令違反かを示すと、最高速度違反は重傷事故で4.65倍、死亡事故で91.56倍の危険な法令違反であることがわかります」と書きましたが、最も危険な法令違反は最高速度違反(スピード違反)であることは間違いありません。
このことを受けて、以前は交通違反取締りの中心は最高速度違反でした。しかし、近年交通違反取締りで違反者の検挙数が最も多いのは一時不停止になっています。
交通事故のない社会を目指すためには交通違反のない社会を目指さなければなりません。そのためには、すぐ交通違反の言い訳をすることなく、自分の交通違反の責任を他の理由にすり替えてしまうようなことなく、また自分が社会に貢献しているから交通違反をしても見逃してもらえるというような驕りを持つことなく、謙虚な気持ちで交通違反と向き合い、二度と交通違反をしないと決心することが大切です。
急いでいるから仕方ないというのは自分自身の甘えでしかありません。急がないでいいように自分自身でスケジュールや予定をコントロールすることが大切です。すべての運転者が自分自身に向き合い、気持ちにゆとりを持って安心運転を行なうことで、交通違反は減り、それによって交通事故も減っていくのです。
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