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今年も秋の交通安全運動が9月21日(土)から9月30日(月)の10日間の期間で実施されました。この日程は1976年から継続されています。
今年の運動重点は、以下の3つとなっています。
(1)反射材用品等の着用推進や安全な横断方法の実践等による歩行者の交通事故防止
(2)夕暮れ時以降の早めのライト点灯やハイビームの活用促進と飲酒運転等の根絶
(3)自転車・特定小型原動機付自転車利用時のヘルメット着用と交通ルール遵守の徹底
運動重点は毎年決められるものなので、多少の変更はあるものの、秋の交通安全運動期間が秋分の日をはさみ、昼よりも夜の方が長くなる季節の特徴をふまえて、毎年「夕暮れ時」の交通安全対策が盛り込まれる傾向にあります。
秋の交通安全運動において夕暮れ時の交通安全対策がなぜ必要かというと、この時期は急速に昼が短くなり、夜の訪れが早まることで、それまで明るい時間だと思って運転していた運転者が同じ時間に薄暗いなかでの運転を余儀なくされることになるからです。
薄暗いなかでの運転がなぜ対策しなければならないかは、この時間帯(17時~19時台)の交通死亡事故が多いということでわかります。
出典:政府広報オンライン「夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時 間帯の交通事故を防ぐには?」
さらに、秋のこの時期から年末にかけてが最もこの時間帯の交通死亡事故が多くなる傾 向にあるため、その直前の秋の交通安全運動期間こそが最も周知するための大切な期間だ ということがわかります。
出典:政府広報オンライン「夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時 間帯の交通事故を防ぐには?」
夕暮れ時の交通死亡事故で最も多いのが「車対歩行者」の事故です。時間当たりの交通死亡事故件数は昼間に対して3.3倍、事故類型比率でも2.3倍の高い確率を占めていて、夕暮れ時の交通死亡事故の約半数が「車対歩行者」の事故となっています。さらに夜間と比べても、車対歩行者の交通死亡事故は夕暮れ時が約2.0倍、事故類型比率で1.1倍となっており、暗い夜間よりも薄暗い夕暮れ時の方が危険だということがわかります。
この夕暮れ時に車対歩行者の交通死亡事故に遭った歩行者の84%が道路横断中の交通事故であり、そのうちの72%が横断歩道以外を横断中に交通事故に遭ったものです。そのうち70%の歩行者に法令違反があり、最も多い違反が走行車両の直前後横断です。
薄暗い夕暮れ時に交通法規を犯して道路を横断することがどれほど危険な行為なのかがよくわかります。また、運転者としても夕暮れ時の道路を横断する歩行者には注意が必要ということです。
なぜ夕暮れ時の歩行者横断時の交通死亡事故が多いのか。それは夕暮れ時は薄暗いため、車の運転者から横断する歩行者を発見するのに昼間や夜間より時間がかかることと、歩行者に関してもライトを点灯していない車が近づいていることを認識するのに時間がかかることで、車の接近を認知しにくいことが多いというのが大きい理由です。
車が来ていないと思って道路を横断しようとしたら予想よりずっと近くに車がいたという歩行者と、通常の道を運転中に昼間なら車を認識して道路横断しないはずの歩行者がいきなり横断をして、薄暗いためにその発見が遅れるということが起こるのです。昼間や夜間であればブレーキをかければ間に合う距離で歩行者を発見できる運転者も、薄暗い夕暮れ時には歩行者が見えづらくて発見が遅れるということもあります。
この発見が遅れる理由が、運転中の視力の低下です。明るい昼間でも通常1.0の視力の人が時速60km/hの車からの視力は0.4に低下します。もし運転者が高齢者で白内障の傾向があればさらに低下します。
出典:思いやりライト「夕暮れ時の視認性研究レポート:北里大学 医療衛生学部 川守田先生に聞く視覚から見る夕暮れ時の特徴」
それに周囲が暗くなることで、目の奥の明るさが低下することで瞳孔が大きくなり、その結果「ぼやけて見える」ということが起こります。これを「夕方老眼」と呼ぶこともあります。日中に目を酷使してからの薄暗い時間帯に起こりやすい現象です。
さらに色によって夕暮れ時のものの見え方にも違いが出てきます。色のコントラストが大きい場合は昼間1.1だった視力が夕暮れ時には0.9になり、コントラストが小さい場合には昼間0.7の視力が0.3にまで低下するのです。つまり、周囲と同化するような色の服を着ていると明らかに見えづらくなるのです。
その他にも昼と夕暮れ時には見えやすい色が変わるという現象も確認されています。これは、「プルキニェ現象」と呼ばれていて、昼間にはは赤が鮮やかに遠くまで見えるのに対し青は黒ずんで見えて、夕暮れ時には逆に青が鮮やかに遠くまで見えるのに対し赤は黒ずんで見えるというものです。夕暮れ時には赤系統の服を着ていると判別されにくいということになります。
夕暮れ時は日中の活動で目も疲れてきています。疲れから注意力も低下してきています。さらに帰宅時間や帰社時間が重なり、車や人の動きも多くなっている時間帯です。
こういう特徴のある時間帯が、秋の夕暮れ時だということです。交通事故を起こさないためにも、この特性を自覚して行動することが大切です。
出典:思いやりライト「夕暮れ時の視認性研究レポート:北里大学 医療衛生学部 川守田先生に聞く視覚から見る夕暮れ時の特徴」
秋の夕暮れ時の薄暗い時間帯に運転する場合は、それ以外の時期や時間帯に運転する以上の自覚が求められます。歩行者も交通事故に合わないための対策が必要になります。
運転者に求められるのは「早めのライト点灯」やハイビームの効果的活用によって歩行者を見つけやすくすることと歩行者から車の接近を認識してもらうことです。
また歩行者に求められるのは、コントラストの大きい服装をすること、または反射材用品等を着用して車から認識されやすくすることと、決して法令違反をして道路を横断しないことです。
秋の交通安全運動にはこれらのことが運動重点として定められています。その理由をしっかり確認して意味ある内容だと自覚することで交通事故は減らすことができます。
交通事故を起こさない知識を身に付けることで、安心運転を行なうことができるようになるのです。
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