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コラム

こんなとき
地震・水害・台風のときの運転
~災害時のための予備知識~
公開:2026年8月26日
この度の令和8年熊本地震・令和8年8月千葉豪雨で被災された方に

心からお見舞い申し上げます

 2026年7月28日、熊本県を最大震度7の地震が襲いました。また、2026年8月13日から14日にかけて千葉県を大雨特別警報が発令される豪雨が襲いました。
 この2つの大きな自然災害により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。また1日も早い復旧・復興を祈念しています。
 自然災害はいつ自分たちの身近に起こるのかわかりません。その自然災害が起こったときに車の運転に関して自分たちはどう行動したらいいのか、何に気をつければいいのか、日頃から準備をしておくことはあるのか、考えておきましょう。

地震発生時に車を運転していた場合

 熊本地震発生時に、自動車を運転中だった人もいたと考えられます。地震発生の際にどういう行動をしたらいいのかを考えてみます。

 まず、地震はいつ起こるのか予測できません。それ故、地震発生の際に車に乗っているかいないかは同じく予測できません。

 では、いざ車に乗っていた場合に、地震が発生したらどう行動すればいいのか考えてみましょう。

 まず、地震が起こった際に明らかに車や地面が揺れていると感じた場合は、かなり大きな地震だと思われるため、次のような行動をとってください。

(1)車をできるだけ安全に停止してください。この際、急ハンドルや急ブレーキは他の車を巻き込み交通事故の原因となりかねないため、ゆっくり安全を確かめて道路の左側に停車してください。



(2)次に、カーラジオやスマートフォンの防災アプリで地震情報や交通情報を確かめてください。その際にこのまま運転しても大丈夫かどうかを確認するようにしてください。

(3)もしそのまま運転を続けても大丈夫と判断して、車を動かす場合は、スピードを出さずに、地震による道路の損壊や道路上の障害物がないかを確かめながら運転するようにしましょう。また信号機が作動を停止している可能性もあるため、他の車や歩行者等の交通パートナーに十分注意してください。

(4)車を置いて避難した方がいいと判断した場合は、できるだけ道路外の車を置ける場所を探して車を移動させて、車を降りて徒歩で避難しましょう。その際に車のエンジンは停止し、車のキーは車内に置いたままにしてください。これは、その後の救護作業や事後処理のために車を移動させることがあるためです。もちろん貴重品や車検証などは必ず持って出てください。窓は閉めて、ドアロックはしないまま避難しましょう。この際に連絡先を書いて置いておく時間があればそうしてください。事後に車が早く戻ってくるようにするためです。

(5)もしトンネル内や崖付近、橋の上など危険な場所にいる場合は、崩れて閉じ込められたり、流されたりする可能性がありますので、可能ならその危険性がなくなる場所まで移動して車を止めましょう。移動の際にも落下物や亀裂などに注意してください。

(6)高速道路を走っていた場合は特に急ブレーキや急ハンドルは危険なため、他の車にハザードランプで知らせたうえで道路上に降りても危険ではない場所まで移動して車を止めて、いち早く非常口から脱出するか、非常駐車帯やガードレール外などの安全な場所に避難しましょう。非常口は約1km毎におおむね設置してあります。

(7)もし車両火災が発生したら、爆発の恐れがない場合は、自身の安全を最優先し、可能な範囲で初期消火に努めましょう。


出典:警察庁 大地震が発生したときに運転者がとるべき措置

 

参考:総務省消防庁 防災マニュアル


地震発生時に津波の可能性がある場合

 地震発生時に津波の恐れがある場合は、さらに別の対策が必要です。

 2011年の東日本大震災時の教訓から、津波の恐れがある場合は「徒歩避難の原則」が定められました。車で避難しようとするたくさんの車が一度に同じ方向を目指して殺到したため、大渋滞が起こったからです。一度大渋滞にはまってしまうともはや前にも後ろにも進めません。渋滞を抜けるまでに津波が到達するかもしれないのです。

 もし地震発生時に津波が来る恐れが分かった場合は、車を降りて徒歩で避難するようにしてください。その際に車をどこに停めてどうしておいたらいいかは、すでに書いた通りです。

 しかし、この津波の恐れがある場合の避難は原則徒歩ということは、未だ浸透していないようなのです。

 2025年7月に起こったカムチャッカ半島付近の地震時で日本国内にも津波警報が出ました。その場合の避難実態についての調査データをみると、調査回答した北海道、宮城、神奈川、静岡の住民のうち避難したのは23.5%でした。

 そのうち、避難の移動手段に関しては、車55.3%、徒歩39.1%、二輪・自転車4.2%という結果でした。車で避難したために避難所に到着するのに30分以上かかったという回答もあったようです。※各4道県の住民を対象にウェブで4,300人が回答

 東日本大震災が起こって、徒歩避難が原則と定めたにもかかわらず、14年後の実際の行動では半数以上がまだ車で避難していたのです。

 車で避難しようとすることには、渋滞にかかる以外にも問題点があります。それは、まず、避難開始までに時間がかかると言うことです。車のキーを準備して、家族が揃うのを待ち、貴重品をトランクに入れたりするために時間がかかるのです。

 内閣府の調査によると、車は徒歩避難者に比べて、避難開始までに統計の中央値で約10分遅くなるということです。この10分の間にも津波が近づいてきているかもしれません。

 国は、津波到達時間が短い地域では、徒歩で概ね5分程度の避難が可能となるよう避難環境を整備することが望ましいとしています。車での避難は避難開始までに時間を要する場合があり、迅速な避難の妨げとなる可能性があります。

 どうしても車がないと避難できないという人がいることはもちろんあります。その人たちが安全に避難できるためにも、どうしても車でなければ避難できない人以外は徒歩で避難するということをしっかり守るようにしたいものです。


出典:自動車で安全かつ確実に避難できる方策内閣府津波避難対策資料)


出典:津波からできるだけ短時間で円滑に避難ができる方策(内閣府津波避難対策資料)


出典:産経新聞 津波警報、半数以上が車で避難…「原則徒歩で」浸透せず カムチャツカ地震、内閣府調査



水害時に車を運転するのが危険な理由

 今回の千葉豪雨のような水害が地震と異なることは、地震のように急に揺れるという訳ではなく、豪雨が続くという予兆があることです。

 しかし、強い雨くらいだと思っていたにもかかわらず、線状降水帯が発生して急に水かさが上がり、道路が冠水してしまうということまでは予測できない場合もあります。

 その際にどういう対応をすればいいのかを考えておきましょう。

 まず、道路が冠水するような場合には、車に乗らないことが大切です。もし乗っていてみるみるうちに道路が冠水するような豪雨になった場合には、地震の時と同じように、車を止めて徒歩で避難することを心掛けましょう。

 その余裕もなかった場合には、車が水没するなどの危険性が伴うことになります。その場合にどうしたら身を守れるかについて覚えておきましょう。

(1)まず、道路水面が車の床面を越えると車が浮き始めます。浮き始めると言うことは、ハンドルもブレーキも効かなくなるということです(フローティング現象)。このときの水深は一般的に約30~50cm(車種により異なる)です。水深がタイヤの半分まで来たら、もう車を動かすことは危険です。その深さになる前に車を安全なところに止めて避難するようにしてください。

(2)乗用車の場合、水深がドア高さの半分を超えると内側からほぼ開けられなくなります。開かなくなる原因は車の外と中の圧力の差が大きいからです。この状態になるともはや窓を開けるための電気系統も水没しているため、窓もあきません。

 こうなるともう窓ガラスを割って出るしか方法がなくなります。窓ガラスを割るための脱出ハンマーを必ず用意しておいてください。

 また、自分の車の窓ガラスが強化ガラスなのか合わせガラスなのか事前に確認しておいてください。強化ガラスだと普通の脱出ハンマーで割ることができますが、合わせガラスの場合は、フロントガラスと同じなので割ろうとしてもひびが入るだけで割れません。こうなるといくらハンマーで叩いても脱出できないということが起こるのです。

 合わせガラスには特殊なポンチタイプかカッター付きの合わせガラス対応のハンマーが必要なのです。



(3)もし車に水が入ってきた場合で外の水深と車の中の水深が同じになったら、圧力が差が小さくなり開けやすくなることがあります。しかし、車内は気密性が高いため、このようになることをあまり期待することはできません。まだ窓が開けれる状況のときに開けておくことで、ドアが開くようになることは考えられますが、通常はその前に避難することを考えた方がいいでしょう。

(4)津波の場合も車が水没するということは水害時と同じですが、津波の場合は車が速い波に流されるということを考えなければなりません。車が流されるような状況では、安全な避難が著しく困難になります。津波の場合に車で避難することは、そうした危険性が伴うということをしっかり肝に銘じておきましょう。

(5)水がひいても浸水して止まった車のエンジンをかけようとしてはいけません。故障の原因になります。その場合にどうしても車を移動させる必要がある場合は、シフトレバーをニュートラルにして車を押して動かす方法がありますが、整備事業者やロードサービスへ相談することが安全でしょう。

(6)車から脱出した場合には、流されないようにまずは車の上で救助を待つということも覚えておきたいことです。


 参考:国土交通省 水深が床面を超えたら、もう危険!- 自動車が冠水した道路を走行する場合に発生する不具合について 


 参考:気象庁 雨の強さと降り方



台風時に車で出かけていた場合

 台風時に注意したいことは、雨と風です。雨の場合はすでに書いた通りですが、強風時の注意点があります。

 台風の暴風時に車で出かけないことは基本ですが、もし出かけていた場合、暴風でハンドルがとられる可能性があるためスピードを出さず、風にあおられないように慎重に運転することが大切です。また昼間でもライトを点灯して運転していることを周囲に知らせましょう。

 風による飛来物が飛んでくる可能性があるため、避けることができないような狭い道を避けてできるだけ広い道を運転するようにしましょう。

 その場合でも猛烈な風ではトラック横転の危険があります。運転することはせずにどこか安全な場所に避難することを考えてください。


  参考:気象庁 風の強さと吹き方

  


災害時の準備と知識をしっかり持って守ることで安心運転

 地震や水害、台風などの災害はいつ起こるか分かりません。そのためその場合の準備と対策を日頃から行っておくことが大切です。

 いざというときのために、車には災害用の備えをしておきましょう。脱出ハンマーを用意しておくことは必須です。その他に、ラジオや懐中電灯、飲料水、非常食、レインコート、タオル、笛など使用する場面を想定して用意しておきたいものです。



 その他に、台風などに備える場合には車止めをしっかりしておく、燃料を満タンにしておく、車のボディーカバーをしておく(この場合は風で飛ばされないよう十分な固定が必要)なども考えられます。

 また自治体のハザードマップは必ず確認して、避難場所や避難経路をしっかり確認しておきましょう。緑色の波のマークがある津波避難場所や津波避難ビルを実際に訪れて確認しておくことも忘れずにしておきましょう。



 災害時に優先すべきは「命」です。決して「車」ではありません。車のキーをつけたまま避難して大丈夫だろうか、盗難に遭わないだろうかなどと考える間にも危険は近づいています。最も大切なのは「命」なのです。

 日頃から「命」を大切に考えることは、無謀な運転をせず、周囲の人に安心感を与える運転にも繋がります。安心運転ができることは災害時にも安心ということに繋がっているのです。

監修

大阪ガスオートサービス
大阪ガスオートサービス株式会社
SAFE推進部 安心運転訓練センター
企業ドライバーに特化した安全運転教育を提供し続け、約30年。
受講企業数450社以上、受講者数は14万人を超える(2026年4月末時点)。
交通心理士/心理士補、指定自動車教習所検定員/指導員、自動車整備士/検査員、交通機動隊白バイ隊員など、豊富な知識と経験を持つ講師陣が、多角的な視点、専門的知見により、安全・安心運転ドライバーへと導く。
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